「私が歯科医を辞めた理由」
〜その2〜
今日は、
医療の現状、歯科の現状を考えて得た答えをお話します。
問題点を上げれば少なくありませんが、
大きな理由として、
1. 医療保険制度に関すること
2. 教育制度に関する問題
3. 医療のシステムに関する問題
などが上げられます。
先ず、医療制度に関して…
日本は国民皆保険です。
つまり、国民は国の決めた何らかの医療保険に入らなければなりません。
これは、
医療保険の加入者が保険料を出し合い,
病気やけがの場合に安心して医療が受けられるようにする
相互扶助の精神に基づき1961年に確立されました。
加入者であれば誰でもあるレベルの治療を受けることができ、
また、収入に応じた保険料が設定され、それを支払う義務があります。
しかし、その費用の差額は大きく、問題との声もあります。
医療を受けても、受けなくても、
最低限支払う年間の金額は、東京23区内の場合、
無料から何と最高約73万円までと大きな差があります。
もっと注目すべき点は、医療は技術職でありながら、
医療従事者の経験、治療のレベルに対しては配慮がされていません。
すなわち…
経験1年未満の新卒の医師でも、数十年のベテランでも、評価、報酬は同額です。
医療レベルが高くても、そうでなくても、同額。
治療行為に時間を掛けて、ていねいに行っても、そうでなくても、同額。
予後が良くても、そうでなくても、同額。
その治療が初めてのビギナーでも、世界的にトップレベルのスペシャリストが行っても、同額です。
このため、
収入を上げるにはトレーニングもそこそこに臨床をスタートし、
医療のレベルより速さが優先されがちです。
また、同じ治療であれば、
それを行ったことは報酬につながりますが…
その内容に関しては問われず、
いくらていねいで高いレベルの治療であっても、まったく評価されません。
例えば、良心的な先生が患者さんのためを思い、
真面目にていねいに治療を行えば、
当然、時間も機材、材料もより多く使用することになります。
その結果は経済的にはどんどん低下して行き、
自分の首を絞めてしまう結果を招きます。
つまり、良心的に、真面目に、患者さんのことを思い、
ていねいに、高度な素晴らしい治療をすればするだけ、
自分の首を絞めて行くといった悪循環、負のスパイラルに陥って行くわけです。
これでは医療としても、技術者としても、
その本質からかけ離れていると言わざるを得ません。
また、保険制度では定められた治療行為を点数化してその点数に対して診療報酬が支払われます。
効果的であっても、認めれていない治療法や治療材料を使用して行っても、報酬は支払われません。
つまり、治療法、治療内容も決められたことにしか報酬がないので、
金額の大小に係らず、良い治療法やよい材料があっても、それ対しては支払われません。
これが、心ある先生の悩みやストレスになっていることが少なくないのです。
この材料を使えば、もっと良い結果が得られるのに…
この方法で治療すれば、もっと患者さんを幸せにしてあげられるのに…
こういった問題が、良心的な名医、良医にジレンマを与え、苦しめる現状があるのです。
きちんと治療すればするだけ、
しっかりと治療すればするだけ、
自分を苦しめる…
皆さんも一度、この問題について考えてみて下さい!
良心的な先生の本当の気持ちが分かって戴けると思います。
また、別の面で…
現状の保険のシステムでは、
一度、歯科医院に掛かって治療して、
もし、気に入らなければ、他の歯科医院に行くことにより
同じ保険治療を受ける事が可能です。
このため、例えば総入れ歯の患者さんなどでは、
いわゆるドクターショッピングと称されるように方々の歯科医院を転々と渡り歩いて、
入れ歯を数個から数十個持っている患者さんなどが出てくる訳です。
これは単にシステムの問題だけではなく、
経験や技術を評価していないために医療全体のレベルが上がり難いことにも起因しています。
もちろん、この保険制度の良い面もありますが、まだまだ改善の余地があります。
やはり、
経験、技術、内容に応じた評価はあって欲しいものです。
(「私が歯科医を辞めた理由」 〜その3〜 に続く…)